患者参加型医療研修について

患者の役割

患者参加型医療では、患者は専門家としてチーム医療に参画します。その際、患者はどのような専門性を発揮すれば良いのでしょうか。本やインターネットで医療情報を収集し、医学的知識を身につければ良いのでしょうか。

 

日本においては、インターネット上で得られる医療情報には正確なものは多くありません。患者参加型医療で求められる患者の専門性とは、このような情報を学んでミニ医者、ミニ薬剤師などの“ミニ医療者”になることではありません。もっと、“患者本来の専門性”を発揮して医療チームに加わります。

 

では、患者本来の専門性とは何でしょうか。それは大きく分けて2つあります。一つ目は、自己管理の専門家となること。そして二つ目は、自己観察の専門家となることです。

 

自己管理の専門家としての役割とは、患者が自身のマネージャーとして、自分の生活を管理=マネジメントするということです。具体的には、きちんと寝る、きちんと食べる、きちんと運動する、きちんと薬を飲む、きちんと通院する、などの行動を患者本人に完璧に実行させるということです。

 

自己観察の専門家としての役割とは、医師や薬剤師などチーム医療のメンバーが提供する治療や投薬が上手くいっているのかいないのかを、チームメンバーにきちんとフィードバックすることです。医療者メンバーが治療や投薬の効果をきちんと把握できない場合、効果の薄い治療法が継続されたり、改善ポイントを見誤ることがあるからです。

 

しかし現実的には、患者からは必ずしも正確なフィードバックを得られるとは限りません。例えば、自己判断で薬を飲まない患者も多いですが、その事実を正確に医師に伝える患者は少ないでしょう。さらには、実際には薬を飲んでいないのに「飲んでいる」と答えることさえあるでしょう。
 医師は、患者からのこうした情報をもとに次の治療法を考えます。例えば、降圧剤を処方しているのに血圧が下がらない患者のケースで考えてみましょう。実際には降圧剤を飲んでいないのに「飲んでいる」というフィードバックを得た医師は、「さらに強い薬に変更しよう」、「高血圧の原因は●●でなく●●かもしれない」などと考えます。こうしたことが繰り返されると、本来行われるべき治療とは別の方向へと治療が進んでしまいます。

 

話を戻しまして、薬を飲んでいるかどうかについて、患者は医師に、本当のことは伝えません。そのため、実際のところ先生方は、みなさんが本当に薬を飲んでいるのか、きちんと効いているのかは分からないものなのです。そうならないために、先生方が提案した治療法が上手く効いているのか、効いていないのかは、次の診察のときに先生にきちんと伝えて下さい。そうでないと、先生方はその治療が上手くいっているのかいないのか、勘違いしたまま、次の治療に進んでしまいます。私も、実際に、先生の前では「ちゃんと飲んでいます!」と言っていた患者の自宅に行くと、薬がわさわさと大量に残っているということを数多く経験しています。